治療について
歯を入れたいとき
歯が抜けたまま放置すると、かみ合わせがずれるので危険です。
やむを得ず抜歯になってしまった場合.....
歯が抜けたままは危険だとききました。どうして?
長年かかってなじんでいるかみ合わせが壊れてしまいます。
歯は隣同士が接していて、かんだときの力(咬合圧)を前歯のほうに分散させます。決して1本だけでささえているのではないのです。
ということは、間の歯が1本なくなった場合は、かむときの力を振り分けようとしても、歯のないところで止まってしまいますので、残った歯の負担が大きくなり、歯が移動してしまい、かみ心地のよいところでかめなくなってしまいます。崩壊してから修復しようとすると長期間+高額になってしまい、現実を超えてしまうことがあります。
しかも歯がなくなったままにすると顔つきもかわります。
ドン・キホーテの顔です。セルバンテスの父は歯科医(外科医)で、おそらく歯にも詳しかったようで、ドン・キホーテを歯が抜けたので「悲惨な顔の騎士」と書いています。
歳を取ったからこういう顔になるのではなくて、歯がなくなったからこういう顔になるということです。del Valle A, Romero M:Don Quixote's countenance before and after losing his teeth.
J Dent Res 88:101-104,2009
さらにセルバンテスはドン・キホーテにこう言わせています。
(ボルチモアのThe Dr. Samuel D. Harris National Museum of Dentistryの展示より)
どういう方法で治せますか?
歯を失ったときの治療法は4つあります。どれも聞いた事があるはずです。
「入れ歯」、「ブリッジ」、「インプラント」、「自家歯牙移植」の4つです。
入れ歯(義歯)
有名ですね。大昔はツゲの木を彫刻してつくったそうです。
今までに知られている最古の木製の総義歯は、和歌山市の願成寺に納められていた尼僧中岡テイの遺品だと考えられています。。通称仏姫と呼ばれたこの女性は、寺の過去帳に1538年に76歳で逝去したことが記されていますので、そんな大昔から義歯は使われていたようです(石井保雄、47-5、1976、歯界展望より)。
歯がすべてない場合は、総義歯、一部なくなったところに入れるのが部分床義歯と呼ばれます。
「そういれば」「ぶぶんいれば」という方が一般的かもしれません。
どちらも歴史ある治療法ですから、よいとされる手順どおりに作れば、かなりいいものができます。
しかし健康保険という予算の縛りのある治療法では、手間、材料とも大幅に妥協したものになりますので、残念ながら快心のできばえのものを作ることは困難です。いちど健康保険を利用して作ってみて、自分なりに要望があるようでしたら、完全オーダーメイドの(それが普通なんですが)義歯を作られることをお勧めします。
だいたい30万円以上かかることが多いですが、毎日使うものですので、10年使うと考えると安いものです。最近はレーザー溶接もありますので、壊れても修理ができますから、安心です。
ブリッジ
歯のない部分の、両隣のはに金属やセラミックスのかぶせものを入れて、その両隣と一体になるように歯を作る方法です。文字で見るとわかりにくいですね。
両隣の歯を橋脚とすると、歯はそれに架け渡された橋げたに相当するので、ブリッジ(橋)と呼ばれます。
日本語では橋義歯とか架工義歯とか記述されますが、さすがに使わないですね。
異物感もなく、1本失ったときなどは手軽に入れることができます。欠点は、両隣の歯が健全な歯でもつなぐために削らないといけないことです。負担は橋脚部分の歯にかかりますので、その歯に負担がかかりすぎて、折れることも考えられます。
インプラント
最近はもう一般的な治療となりました。
チタン製のねじを顎の骨に埋める処置です。
かつてはブリッジが主役でしたが、いまは主役はインプラントになってしまいました。
自家歯牙移植
親知らずや自分のはならびからはみ出してしまったような使っていない歯がある場合、それを移植して使うことができます。ちょうど良いサイズがあるかどうかなど条件によりますが、案外もちます。
しかも自分の歯ですから、なにか得した気分もあります(日本人向け?)。
開業以来やっていますが、成績はいいです。