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水酸化カルシウムとクロルヘキシジンのE.faecalisでの抗菌効果
根管治療での水酸化カルシウムとクロルヘキシジンの効果
細菌が根管内に進入することが、根尖病変の始まりと持続のいちばんの原因である。根管治療のゴールは根管内の細菌をなくすことである。根管形成により細菌を減らすことができるが、根管側枝や分枝イスムスや根尖部の細菌を完全に除去することはできないので、さらに減らすには薬物療法が推奨される。
水酸化カルシウムは根管治療において使われるいちばんポピュラーな材料のひとつであり、pHを上げるので抗菌性がある。クロルヘキシジンが根管用の薬剤として登場した。なぜなら抗菌スペクトルが広く、陰イオンの物質に吸着するので効果が長く続き、濃度が下がるにつれてゆっくり放出される性質があるからである。水酸化カルシウムとクロルヘキシジンの両方を使うと水酸化カルシウム単独で使うより根充時の封鎖に影響を与えることなく、抗菌作用が良いことが示されている。Enterococcus faecalisは持続性の根管内の感染からしばしば分離されるグラム陽性菌であり、象牙細管深くにまで刺入して根管治療に使われる薬剤が効かない。さらにE.faecalisは見えるが培養できないとして紹介された最初のグラム陽性菌である。
ブラジルのサンパウロ大学の研究者が、クロルヘキシジン単独と、クロルヘキシジンと水酸化カルシウムの共用でのE.faecalisへの効果を調べた。人間の単根歯をつかって、水酸化カルシウム、2%クロルヘキシジン、水酸化カルシウム+2%クロルヘキシジン、コントロールとして生理食塩水を使って、根管治療を行い、CFUsと蛍光顕微鏡検査法による細菌の生存能力とを調べた。
水酸化カルシウムもクロルヘキシジンも有意に細菌を減らした。クロルヘキシジンの方が水酸化カルシウムよりも減らせた。クロルヘキシジン単体と比べて、クロルヘキシジンと水酸化カルシウムの共用には、有意差は認められなかった。
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クロルヘキシジンを根管治療にあまり使わないけどなぁ日本では。
R.Delgado, T.Gasparot, C.Sipert, S.Pinbeiro, I.Moraes, R.Garcia, N.Bernardineli, Antimicrobial Effects of Calcium Hydroxide and Chlorhexidine on Enterococcus faecalis, J Endod 2010;36:1389-1393