歯科医 東のウェブログ
伝統食への回帰
食育の話。
食育が流行?してますが、流行にしてよいものです。食育の話をすると、
まず目を通しておくべき本が、W.A.Priceの"Nutrition and physical degeneration"です。
なんと1939年初版で、1930年から14カ国で生態学的調査を行ったという労作です。
いまの食育と同じことを70年も前に言っていたのが驚きです。日本語訳も出ています。
古い本なので、全てが正しいわけではありませんが、面白いです。
現代風の同じような本なら、「食卓の向こう側」という本があります。
ウエストン・プライスは、オハイオ州クリーブランドの歯科医で、開業医をしならがら、多くの論文を発表していた。何年もの間、患者の変化を観察していた。狭い歯列弓、叢生等。
旅行するだけの財力があったので、1930年代にプライスと妻は世界の孤立地域に行き、どうしてその地域のヒトが健康なのかを調査した。プライスは齢60に達していた。
狩猟や採集による食料が、結局、健康によく、長寿のためによく、虫歯に対して免疫があることを認めざるを得なかった。
プライス夫妻の旅行は、スコットランド、スイス、カナダ、アラスカ、ペルー、アフリカ、オーストラリアに及んだ。それぞれの場所で、夫妻がみたのは、類似した健康さと、何世代にもわたって続いている伝統的な食事に従う隔離された集団であった。都市部で普及している加工食品にさらされていなかった。
プライスが会ったほとんどのひとびとが、利用できる土地のある孤立した地域でしばしば肉や魚を食していた。アルプスのスイスの住民は、低温殺菌を施していない発酵乳製品、特にチーズやバターを日常食にしていた。アウター・ヘブリディーズ諸島のゲール人は、乳製品を食べていなかったが、魚介類を食べていた。エスキモーはほぼ100%動物からとれるものを食べていた。ニュージーランドのマオリ族は、シーフードと豚肉、さまざまなフルーツ。食物を分析すると、現代食と比較して、10倍の脂溶性ビタミンと4倍の水溶性ビタミンが含まれていた。
プライスの結論。栄養は、健康のための方法であり、古くからの習慣に回帰するというのがその答えである。
Price, W.: Nutrition and Physical Degeneration. New York: Paul B. Hoeber, Inc., 1939.
2012-12-14