歯科医 東のウェブログ
ドン・キホーテの歯の喪失
Don Quixote's tooth loss-related appearance
del Valle A, Romero M:Don Quixote's countenance before and after losing his teeth.
J Dent Res 88:101-104,2009
ミゲル・デ・セルバンテスのドン・キホーテは石に口をぶつけて、召使いのサンチョに口の中がどうなっているか調べさせた。サンチョはほとんど歯が残っていないと言った。次の章でサンチョはドン・キホーテのことを、「悲惨な顔の騎士」と呼んだ。なぜかと尋ねると、サンチョは、ドン・キホーテを「醜い顔」といったのかというと、戦に疲れていたのか、臼歯と切歯を喪失したせいだろう。セルバンテスの父は歯科医だったということを考えると、ドン・キホーテの悲惨な顔と、ドン・キホーテが歯を失っていたということの関係は面白い(Wikipediaで見たら(情けない)、父は外科医でとかいてあったけど、英語版でみてもやっぱり外科医)。
年齢、生活、顔面の特徴
ドン・キホーテは50歳に乗ったくらいで、当時の平均寿命が30から35歳ということを考えると、とても年を取っていた。当時の50歳はいまの50歳より老けてみえた。目尻が下がっており、口まわりのシワも目立ち、あごのラインが波打ち始めていて、頬と側頭部の脂肪がほとんどないような感じだっただろう。ドン・キホーテは、「やせた」とか「やつれた感じ」とも記述されている。これに加える影響は、いつもおなかが空いていて、人生も不運だったことがある。
垂直高径の喪失
臼歯と切歯の喪失は、ドン・キホーテの年と生活を反映した見た目を強調した。臼歯と小臼歯を失ったことによる咬合高径の喪失は、ドン・キホーテの顔を変化させた。さらに切歯と犬歯を失ったので、さらに変化が起きた。顔面の下顎骨部分の筋肉が緩んだので、口唇の輪郭がぼやけて、口唇とおとがいの間のひだが深くなり、口角が重力で下がり、頬はくぼんでいる。歯槽骨がなくなったので、くぼんだ容貌と顔面中央と顔面の下1/3のシワが深くなっただろう。そういうことが重なってかわいそうな顔になった。