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親知らずと薬
親知らずを抜くときに薬は必要ですか?
親知らずの抜歯後の感染を予防するための抗菌薬の処方は、重要な議論のテーマである。2007年アメリカ心臓協会が、抗菌薬の過剰摂取に関連するリスクについての現在のエビデンスに基づいて、抗菌薬の予防投与の新ガイドラインを発行した。副作用や耐性菌の出現は、感染より大きなリスクである。
ニュージーランドのダニディンにあるオタゴ大学の研究者が、同一患者で、埋伏智歯の抜歯時の、抗菌薬の予防投与の有無の比較をした。95人の患者を2群にわけて、患者ごとに、1本の抜歯には抗菌薬を投与して、残りの1本にはプラセボ薬を投与した。グループ1は、アモキシリン1mgを抜歯の1時間前に服用した。さらにグループ2は抜歯後、アモキシリン500mgを8時間ごとに服用した。
疼痛、腫脹、発熱、開口障害に関して、抗菌薬とプラセボ薬との間に、有意差は認められなかった。術後感染は6ケースで、380本の抜歯のうちの2%であった。ドライソケットが、プラセボ薬グループで3症例あり、アモキシリン1回投与のグループで1症例あった。複数回投与のグループでは、ひとりの患者だけが、抗菌薬とプラセボ薬両方とも、ドライソケットが認められた。術後感染の割合は非常に低く、両グループ間では有意差は認められなかった。
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それぞれのケースは個別に評価させなければならないが、抗菌薬の副作用等のリスクは、抜歯後の感染のリスクを上回る。
Siddiqi, A., Morkel, A., Zafar, S.: Antibiotic Prophylaxis in Third Molar Surgery: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Clinical Trial Using Split-Mouth Technique. Int J Oral Maxillofac Surg 39: 107-114, 2010.
2011-01-21